被災地の岩手・宮城・福島の3県の生協連は、これまでも被災者の生活再建のために共同で声をあげ、最近では福島第1原発からのアルプス処理水海洋放出に反対する署名に取り組むなどしています。
政府が2022年12月22日のGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議において、政府自身が「可能な限り原発依存度を低減する」としてきた立場を180度転換した新たな原発推進政策は、いまだに続く福島第一原発事故後の苦難や教訓を忘れたかのような内容であり、唐突なまでの方向転換は、民意を軽視したものです。被災3県の岩手・宮城・福島の生協は、原発に頼らない事業やくらし、持続可能な社会をめざして、再生可能エネルギーの利用や普及、省エネにも努力しています。
以上のような理由から、3県の生協連会長名で、今回の原発回帰の方針に、強く反対する共同声明を発表いたしました。
なお、この意見書は、「内閣総理大臣」、「経済産業大臣」、「原子力規制委員会等関係大臣」あてに、1月27日付で送付いたしました。
<意見表明>
2023年1月27日
「共同の意見声明」
原発回帰への方針転換に反対し、原発に頼らないエネルギー政策を求めます
岩手県生活協同組合連合会会長理事 飯塚 明彦
宮城県生活協同組合連合会会長理事 冬木 勝仁
福島県生活協同組合連合会会長 吉川 毅一
政府は、昨年12月22日岸田首相を議長とするGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議において、新たな原発推進政策を含む基本方針を決めました。政府自身が「可能な限り原発依存度を低減する」としてきた立場を180度転換し、「原発再稼働の加速」「原発の60年を超える長期運転」「新規原発建設」と原発を最大限活用することを含んだ方針となっています。いまだに続く福島第一原発事故後の苦難や教訓を忘れたかのような、原発回帰への方針転換に反対し、改めて原発に頼らず再生エネルギー中心のエネルギー政策とすることを訴えます。
政府が原発推進・回帰の理由としてあげている電力需給のひっ迫や電気料金の高騰、温暖化対策に対して、原子力発電は即効的な効果はありません。建設は早くて2030年代の計画であり直面する問題の解決になりえず、出力調整ができない原発は電力需給に柔軟に対応できない電源です。原発による電力は、原発立地地域への対策費用、廃炉費用及び賠償費用など多額のコストがかかっており、必ずしも安価とは言えません。また、国際環境NGOは、原発推進による温暖化や事故のリスク、使用済み核燃料処理問題などが解決しておらず持続可能でないことを警告しています。
ロシアのウクライナ侵略では原発が攻撃の標的にされています。原発が破壊されれば、多くの国民の生命の危機に直結します。危険な原発をなくすのではなく推進するのは安全保障の点からも避けるべきことです。
原発政策については、原発事故の翌年2012年から11都市で意見聴取会や討論型世論調査などをして導き出したのが、「30年代に原発ゼロ」という目標だったのではないでしょうか。将来世代に「核のゴミ」という負の遺産を残さないために、原発ゼロ目標を支持し、省エネや再エネ利用に取り組んできました。にも関わらず、国民的な議論が不十分なまま、わずか4か月の会議で政府方針を転換し、今後閣議決定しようとしています。福島第一原発のアルプス処理水の海洋放出の問題とも重なることですが、国民的な合意が不十分なまま実施するのは、民主主義の観点からも問題のある決め方です。
資源に乏しい日本ですが、再生可能エネルギーの可能性は十分あると言われており、その導入を強力にすすめ、原発から確実に脱却することが将来世代への責任だと考えます。何より、原発事故のため多くを失い、今なおふる里福島に帰れない、帰っても多くの困難を抱えている人々がいることを軽視してはなりません。
以下について要望します。
1.GX実行会議における、「再稼働の加速」「原発の運転延長」「新型炉への建て替え」を柱とする原発回帰の計画について反対し、撤回を求めます。
2.国は、原発からの確実な脱却をめざし、そのための再生可能エネルギーの全面的活用に尽力してください。
以上
岩手県生協連 事務局 電話:019−684−2225
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