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県生協連ニュース

09/01/01

かつてない「嵐」に抗して
生命と人権を守る「協同」の営みを!
会長理事 加藤善正
 

 新年にあたり、県内および全国の各生協の組合員・役職員のみなさま、また、日頃ご協力を賜っているみなさまに、衷心よりのご挨拶を申し上げます。

 旧年は「くらし・地域・平和・経営の四つの危機」が深刻に進行し、多くの人々が「閉塞感」に胸を痛めた一年でした。特に、「投機マネー」による「原油・穀物」の史上最高の暴騰、アメリカ発の金融危機とそれがもたらす実体経済への深刻な影響、失業と倒産、経済不況が身近に迫っております。

 こうしたかつてない「嵐」が、今年、どこまで吹き荒れるか、この「嵐」に抗して、私たち生協運動がどのような役割・使命を果たすのか、みんなで決意を新たにしようではありませんか。

 私は一二年ほど前に、日生協の「二一世紀ビジョン研究会」にコープ東北サンネット理事長として参加し、一年半、日生協常勤役員や他のメンバーと激しい議論を展開したことがあります。その主な論点は「グローバリゼーションを生協として如何に捉えるべきか」でありました。私は当時、内橋克人氏の「規制緩和という悪夢」などの単行本や雑誌「経済」などを読む中で、日本が進めている「小さな政府・規制緩和・競争原理の導入・構造改革」は、「グローバルスタンダードに合わせた国づくり」とはいえ、その本質は「アメリカンスタンダード」への屈服・追従であり、「資本の論理」そのものである。「人間の論理」を掲げてきた、協同組合運動の歴史的な「ロマン・理念・理論」を視座に分析するなら、グローバリゼーションの「光と影」、とりわけ「影」を指摘しそれに抵抗する運動が不可欠である、と強く主張しました。

 日生協常勤部は「グローバリゼーションは人類の希望であり、平和をもたらす。グローバリゼーションによる消費者利益を積極的に取り込む事業こそ、これからの生協の役割である」と繰り返し、「ビジョン・理念」にその主張を書き込みました。それ以来、日生協の路線は、七〇〜八〇年代の飛躍的発展を遂げた「日本型生協運動」としての路線を「変質」させました。今こそ、「グローバリゼーション」に対する生協としての「分析・評価」が再び求められており、新しい「嵐」到来を前に、生協運動の「ミッション」を再確立することが急務ではないでしょうか。

 岩手の生協運動は、こうした日生協路線を批判的に捉えて、「地域に根ざし役立ち・信用され・サポートされる生協」「一九九五年ICA声明」などを重視して、「資本の論理」に抵抗する運動と事業の一体的展開をめざして来ました。

 私はこうした経緯からも、最近のアメリカ発の金融危機・経済不況に関して、年末・年始にかけて、世界経済や日本経済の危機と見通しに関する多くの著書を読みふけりました。

 その中で、いまやベストセラーになっている「強欲の資本主義・ウォール街の自爆」(神谷秀樹著・文春新書)。経営コンサルタントであり、私も何度か参加した「船井セミナー」の主宰者船井幸雄氏の「二〇〇九年、資本主義の大崩壊」(ダイヤモンド社)。「世界」一月号、「経済」一月号などを読むと、二〇〇九年からの数年間、世界も、特に日本は現在マスコミや政府が流しているような「嵐」ではなく、一九二九年の世界大恐慌以上の、私たちには体験したことのないような「大型台風」の襲来を予測しています。

 私たちにとって、家計や地域経済・生協経営などの影響も看過できませんが、生協運動としては、国民の憲法で保障されている権利、すなわち二五条の「生存権」、一三条の「個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重」など、「基本的人権」の軽視・侵害などを真正面に位置づけた新しい運動の構想が求められると考えております。

 すでに始まっている「派遣切り」「社宅追出し」「内定取り消し」「貸し渋り・貸し剥がし倒産」など、こうした憲法上の「国民の権利」を否定する動きが出ていますが、これからの本格的な「大型台風到来」が、こうした「生命・人権」をも奪う危険性を予知しなければなりません。

 こうした中で、今年は、劇映画「日本の青空IIいのち輝く里」の製作・上映運動を、岩手県生協連としても大きな力を入れることを先ほどの理事会で決めました。この映画は沢内村の「生命行政」、四七年も前に、六〇才以上の老人と乳幼児医療費の無料化を断行し、全国の自治体で初めて乳幼児死亡率ゼロを実現した、「深澤晟雄村長」と「自分たちで生命を守った村」を描く映画です。

 深沢村長の政治哲学ともいえる「語録」が、昨秋完成した「資料館」から発表されていますが、その幾つかを紹介します。

人命の格差は絶対許せない。生命健康に関する限り国家ないし自治体は格差なく平等に全住民痛いし責任を持つべきである。
政治の中心が生命の尊厳・尊重にあることを再確認し、生命尊重のためにこそ経済開発も社会開発も必要なんだという政治原則を再確認すべきであります。
お年寄りを生産能力がないからといって粗末にする、そういう姥捨て山のような考え方では社会の秩序は保たれません。
生命の商品化は全体許されません。人間尊重・生命尊重こそ政治の基本でなければなりません。
私は激しく戦争を呪います。人を殺して得られる幸せなど断じてありません。最大の人間苦をもたらす最大のものは戦争であります。

 地域医療の崩壊・介護保険制度の危機・年金や弱者切捨ての社会保障制度が多きく揺らぎ、これから始まる「大型台風」による被害に対する私たちの長い闘いを準備するとき、この深澤村長の理念と、沢内村の人々の「協同」が作り出した輝かしい生命行政から学ぶことがたくさんあります。この映画はそういう意味でも、私たちの運動の「武器」になるに違いありません。

 新年は私たちの生協運動の真価が問われると同時に、私たち一人ひとりの「生き方」が問われる試練の一年になると考えます。